こんにちは訪問看護ステーションで働く理学療法士の(@kyunn23)キュンです。
リハビリの現場では、「大殿筋が弱いからブリッジをしましょう」と考える場面は少なくありません。
もちろん筋力強化は大切ですが、本当に重要なのは筋力そのものではなく、大殿筋が動作の中でどのような役割を果たしているかを理解することではないでしょうか。
今回は、歩行・立ち上がり・段差昇降を通して、パーキンソン病における臀筋群の役割と臨床での運動選択について考えてみます。
大殿筋は「蹴り出す筋」ではない
「大殿筋=股関節を伸展させる筋」というイメージがあります。
しかし歩行では、最も活動するのは**初期立脚期(Initial Contact~Loading Response)**です。
この時の役割は
• 股関節屈曲を制動する
• 荷重を受け止める
• 衝撃を吸収する
• 体幹を安定させる
つまり、
「脚を後ろへ蹴る筋」ではなく、「荷重した身体を受け止める筋」
として働いています。
パーキンソン病では、この「受け止める能力」が低下すると、前方へ移動した身体を十分に制御できず、小刻み歩行や突進歩行を助長する一因になる可能性があります。
立ち上がりでも同じことが言える
立ち上がりでは、まず体幹を前へ倒し、重心を足部へ移動させます。
この前方への重心移動には
• 体幹前傾
• 股関節屈曲
• 足関節背屈
が重要であり、
大殿筋が前へ身体を運んでいるわけではありません。
離臀(お尻が椅子から離れる瞬間)以降、
前へ移動した身体を
大殿筋が受け止めながら股関節を伸展し、立位へ導きます。
つまり、
「前へ行く筋」ではなく、「前へ行った身体を支える筋」
という理解が重要です。
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パーキンソン病でよく見る場面
臨床では、
• 着座時にドスッと座ってしまう
• 立ち上がりで手が離せない
• 立位で「伸びよう」とすると後方へ倒れそうになる
という場面をよく経験します。
これらに共通しているのは、
重心移動後のコントロールが難しいということです。
「前へ乗れない」のではなく、
「前へ乗った身体を支えられない」
利用者さんも少なくありません。
そのため、臀筋群には単なる筋力だけではなく、荷重位で身体を制御する能力が求められます。
ブリッジで足が攣る理由
臀筋を鍛えようとしてブリッジを実施すると、
ハムストリングスや足趾が攣ってしまう利用者さんは少なくありません。
これは
• 大殿筋が十分に活動できない
• ハムストリングスが代償している
ことが多いと考えられます。
このような場合は、
無理にブリッジを続けるよりも、
荷重位で臀筋を使う課題へ変更した方が、実際の生活動作へ結び付きやすいと感じています。
臨床でおすすめしている運動
① 立ち上がり訓練
立ち上がりは最も機能的な運動の一つです。
ポイントは
• 鼻をつま先より前へ運ぶ
• 離臀後に臀部で身体を支える
• ゆっくり座る
特にゆっくり座る動作では、
大殿筋が遠心性収縮で股関節屈曲を制御します。
この働きは歩行初期立脚期にも共通しています。
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② ヒップヒンジ
股関節から動く感覚を学習するには非常に有効です。
腰ではなく股関節を使うことで、
臀筋群の活動を促しやすくなります。
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③ 段差昇降
臨床で最もおすすめしたい運動の一つです。
段差を上がる時は
• 大殿筋
• 中殿筋
• 大腿四頭筋
が協調して身体を持ち上げます。
一方、下りる時には
大殿筋と大腿四頭筋が遠心性収縮によって身体を受け止めます。
これは歩行初期立脚期や、ゆっくり座る動作と非常によく似た役割になります。
臨床で評価したいポイント
利用者さんが立ち上がれない時、
「臀筋が弱い」と決めつける前に確認したいことがあります。
• 前方への重心移動はできているか
• 足関節背屈は十分か
• 離臀後に身体を支えられているか
• ハムストリングスが代償していないか
この評価ができると、
「前へ乗れない」のか
それとも
「前へ乗った後に支えられない」のか
を区別でき、介入方法も変わってきます。
まとめ
私たちが目指すのは、
「臀筋を鍛えること」ではありません。
目指すのは、
荷重した身体を受け止め、安定して動作を遂行する能力を高めることです。
そのため、ブリッジだけにこだわる必要はありません。
• 立ち上がり
• ヒップヒンジ
• 段差昇降
• スクワット
など、実際の生活動作に近い荷重位での運動を選択することで、歩行や立ち上がりへの汎化が期待できます。
筋力だけを見るのではなく、
「動作の中で臀筋群がどのような役割を果たしているのか」
という視点を持つことが、パーキンソン病のリハビリでは特に重要だと考えています。