理学療法士 キュンの在宅リハログ

「モニター、機器が少ない中でのフィジカルアセスメント方法」や臨床疑問をできるだけ分かりやすく、セラピストはもちろんのこと在宅に関わっている看護師やヘルパーにも使える情報を発信していくブログです。

エビデンスに基づいたわずか数分でどんな環境でも行える転倒評価

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エビデンスに基づいたわずか数分でどんな環境でも行える転倒評価

久しぶりの投稿になります。

理学療法士のキュン(@kyunn23)です

 

本日は、転倒リスクについてエビデンスを交えながら評価方法をお伝えします。

 

 

みなさんは、転倒評価の時に何を評価していますか?

 

バランス評価?

動作評価?

 

他にどんなことをされているでしょうか?

 

在宅では、

ある環境の中で

限られた時間の中で

的確に評価を行なっていかなければいけません

 

TUG

POMA

BBS

FRT

FSST

 

 

これらは、代表的な臨床的バランス能力指標です。

 

たぶんほとんどの方が、臨床でこれらの評価をしたことがほとんど無いと思います。

 

 

理由は、環境(椅子がない、リーチ動作をしたいが物が置いてあってできない、広い空間がないなど)の問題と労力がかかることが挙げられると思います。

 

POMAに関しては、当事業所でも使用している評価なので屋外歩行時の評価に使用しますが時間と労力がかかり非効率に思えます。

 

では、どうすればいいか?

この環境と労力の問題を解消してくれる評価があります。

 

それは、

①的確な問診

②簡易的なバランス評価 です。

 

普通じゃんっと思われた方!

普通のことをエビデンスに基づいてやるだけなんです。

なぜエビデンスが大切か!

 

例えば、

私たちもこの動作ができれば杖を使わなくても歩ける指標だとエビデンスで理解しているので

 

「ここから立ち上がれれば杖は使わなくても歩ける指標です」

と伝えることができます。

 

また、このように伝えると

「この高さで立てるように頑張ろう」

と基準が明確になるので利用者のモチベーションも一気に高くなります。

 

転倒リスクを評価しつつ、利用者のモチベーションも高めることができる方法であり、私も実践しています。

 

この記事を読むことによって

エビデンスに基づいた的確な問診を行うことで転倒リスクを把握できる

 

②立ち上がり評価と20秒間の立位保持評価だけで転倒リスクを把握することができる

 

病院勤務されている方にも分かりやすい内容になっていると思いますので最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 転倒の危険因子とは?

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転倒するリスクが高くなる因子ってバランス以外に何があるか理解されているでしょうか?

 

Chan JTらによると

 

①転倒歴があること

②起立性低血圧

③視力障害

④歩行やバランス能力の低下

⑤服薬状況

認知症認知障害

 

 

身体的要因や環境的要因などのさまざまな要因が示されています。

そして、これらの転倒リスクを把握することが転倒発生率を30 〜40%減少することが可能と報告があります。

 

つまり、これらを評価していくことが転倒評価で必要になるということです。

 

問診や観察内容

転倒歴

 

David)らは

すべての高齢者に対して効率的な転倒危険性を把握すべきとしている。

一年以内の転倒歴があれば、高リスク群と判断し、家屋環境を含む多元的な評価を行う必要があると示している。

 

 

つまり、転倒歴を問診で聞き出して一年以内に一度でも転倒していたら高リスク群と判断して介入していかなければいけない。

 

初回評価時には、

「いつ、どこで、どのように」と話を進めて一年以内に転倒があったのか聞けると一つの指標になります。

 

起立性低血圧

ふらつきや失神を惹き起こすことから転倒の危険因子となります。

 

心機能低下や糖尿病を有する人、長期臥床があった人などで生じやすいです。

 

また、服薬状況との関連性もあることからこれらを念頭に置いた介入が必要です。

 

yamaga.hatenablog.jp

 

 

視力障害

Bergland)らによると、

視力と転倒発生率を検討した報告では、

利用者が4m離れた誰かの顔を確認できない場合の転倒発生率はオッズ比1.64、新聞紙が読めない場合は2.0であるとされている。

 

つまり、問診で

視力はどのくらいですか?」と聞かないでください。

 

私の顔がよく見えますか?新聞は読めますか?」と質問することによって転倒リスクを把握することができます。

 

歩行能力

 

基本的に、歩行速度が遅い人は転倒リスクが高い。これは、リハビリの方であればわかると思います。

 

よく教科書に、

自由歩行速度が1.14秒(10m歩行所要時間8.8秒)以下の人が、、、

このような記載がありますが在宅で10mの距離を測定して評価するのは難しいです。

 

そこで、歩行時になにを観察して欲しいか!!

 

歩行時に話しかけた時の反応を観察してください

 

Lundin-oisson L)らによると、歩行可能者に対して歩行時に意図的に話しかけそこで立ち止まるなどの歩行の中断が見られる人は、転倒リスクが高いと判断するとしている

つまり、歩いている時に会話をするたびに止まってしまう人は転倒リスクが高いということです。

 

 

ぜひ、歩行訓練時に意識して会話してみて下さい。

 

バランス評価については後ほどお話しします。

 

服薬管理

高齢者では、薬物に対する感受性が一般成人と異なり、副作用発現率が高くなるため、薬剤師の副作用による転倒のリスクなら注意が必要です。</p

Tinetti)らによると

ベンゾジアゼピン系薬(抗不安薬の第一選択薬)

フェノチアジン系薬(抗精神病薬

抗うつ薬

服用している利用者は、転倒発生率が増加すると報告している。

 

Ganz DA)らによるとバランス能力の低下を自覚しているベンゾジアゼピン系の服薬の転倒リスクは増加して、一年以内の転倒率は50%になる。

 

倉沢)らによると服薬数が増えていくにつれて転倒リスクが高くなり、とくに5種類以上の薬を服薬している人で特に転倒リスクを起こしやすいと報告している

 

 

つまり、服薬情報(抗不安薬抗精神病薬抗うつ薬を内服している人や5種類以上の薬を服薬している人)は、転倒リスクと非常に密接な関係をしています。

 

上記3つの薬を服薬していないか

5種類以上の薬を服薬していないか

 

この二つだけでも問診やお薬手帳で確認してみるといいと思います。

 

yamaga.hatenablog.jp

 

 

認知面、心理面

認知障害は、転倒及び転倒による骨折の危険因子となる。 

Guo Z.et)らによると

MMSEで見た場合、スコアが18〜23の75歳以上高齢者では、認知障害がない人に比べて転倒による大腿骨頸部骨折のリスクが2倍となると報告している。

 

心理面では

Tinetti ME)らによると

「転倒恐怖症」転倒に対する永続的な恐怖は、転倒非経験者に比べて高いと報告している。

 

これらより、認知障害がある方や転倒恐怖症がある方は、転倒リスクが非常に高くなるということがわかります。

 

認知症があるか怪しい方は、積極的に検査を実施して転倒リスクを把握するといいと思います。

また、一度でも転倒された方は転倒恐怖症になる可能性が非常に高いです。

転倒される前に予防できればいいのですが、転倒された方であれば安心できる環境を提案することで恐怖症を克服できると思います。

 

バランス能力

Ganz DA)らよると

転倒研究を分析した結果、バランス能力の指標は、最も多く研究された転倒を予測する因子であり、バランス能力の障害は転倒発生率を増加させると報告している。

 

 

つまり、転倒リスクを評価する上で欠かせないものということである。

 

そこで2つの簡易バランス評価をお伝えします。

これの凄いところは、確立されたエビデンスがありながら労力もかからず、そして環境にも左右されないところです。

 直立検査

一つ目は直立検査です。

望月)らよると

安定した屋内歩行の目安

タンデム立位での20秒程度の立位保持

閉眼閉脚立位で30秒間の立位保持

 

屋内歩行の自立

閉脚位での立位保持能力が必要

と報告している。

 

下の表が望月らによる20秒間の立位保持能力と歩行能力との関連性を示した表である

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この評価は、タイムウォッチだけあればどの環境でもできます。

 椅子からの立ち上がり

2つ目は、椅子からの立ち上がりです。

Tinetti ME)らによると

下肢筋力の低下は転倒発生率を増加させる要因であると報告している。

 

 

筋力評価にはMMTハンドベルダイナモメーターなど測定する方法があります。

しかし、MMTは測定値の客観性には限界があるということ、ハンドベルダイナモメーターなどの筋力測定器を用いた方法は、客観的な評価が可能であるもそもそも機器が無ければ使うことができない。

 

そこで、筋力測定器を持参してない場合には、椅子からの立ち上がり動作からおおよその筋力水準を測定することが出来ます。

 

平澤)らによると

連続歩行の自立に十分な筋力水準として0.40kgf/kgの膝伸展筋力との関連を示している

 

 

大森)らによると

40cmに調整した椅子やベッドなどから、手支持を用いず立ち上がらない症例は、独歩に必要な下肢筋力閾値を有していない可能性が高く、歩行に関して監視や介助、もしくは歩行補助具の選定が必要と報告している。

 

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 上記の表が、座面40㎝に調整した椅子やベッドなどから、手すり支持を用いずに立ち上がれる時の膝伸展筋群との関係を示したものです。 

 

ベッドや椅子の高さを測定して手支持なしで立てるか今日からやってみてください。

 まとめ

 

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まずは、問診や観察で

①転倒歴
②起立性低血圧
③視力障害
④歩行
⑤服薬状況
認知症認知障害

6つを評価していきましょう。

 

そして、

バランス能力として

直立立位と椅子からの立ち上がりを行い評価を進めてみましょう。

 

初回評価時には、利用者の状況が把握できていないこともありとても有効な手段だと思っています。

 

最期まで読んでいただきありがとうございました。

この記事より少しでも臨床に生かしていただけたら幸いです。

 

下記の記事も参考にしてみてください↓

 

yamaga.hatenablog.jp

 

 

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