薬剤から合併症を予測し読み取る
薬剤から合併症を予測し読み取る
こんばんは。理学療法士のキュン(@kyunn23)です。
薬剤を調べることでさまざまな情報を得ることができます。
薬剤の基本的な重要事項2つです。
①薬剤はなんらかの症状があるから使用する
②どんな効果的な薬剤でも必ず副作用がある
つまり、
①薬剤の種類から「症状」「合併症」「疾患」か予測できます。さらに、薬剤の量の変化から今の状態がわかります。
②副作用を把握しておくことでリスク管理ができます。
薬剤の種類から「症状」「合併症」「疾患」を予測
新規の依頼が来た時は、もちろん薬剤の情報は確認すると思います。
なぜやらなきゃいけないかと言うと薬剤の種類から「症状」「合併症」「疾患」を見つけることができるからです。
これがそんなに重要なの??
と思われる方もいると思います。
理由は、サマリーや主治医からの情報提供書の記載は薄っぺらな情報しか載っていません。これだけに頼ろうとすると情報が全然足りないからです。
例えば、指示書の疾患名に脳梗塞、糖尿病、高血圧が記載してありました。もちろん、薬剤も抗血小板薬、インスリン、降圧剤だったら同じなのでいいですがそこに抗てんかん薬や睡眠安定剤も飲んでいたとしましょう。
「この人は、てんかんを過去に何度かやっているな。夜はあまり慣れていないのだろうか。」
と考えられますよね。
そうなると、初回の問診にて
「てんかんっていつ頃発症されたんですか?それはどんな時になったんですか?どうしたら治ったんですか?どんな痙攣の仕方をしていたのですか?」
「夜は寝れていますか?トイレには頻回に行くんですか?日中は寝てしまいますか?夜間のトイレのふらつきは大丈夫ですか?トイレまではの環境を見せてもらってもいいですか?」
このように薬剤情報から問診の内容を増やすことができます。そして、他の問題やリスクを予測しやすくなります。
ぜひ、訪問にいかれる方は薬剤情報を一度確認してから介入することで漏れのない問診を的確に行い、何か副作用らしき症状があればすぐに対応しやすくなります。そして、利用者から信頼されること間違いなしです。
薬剤の量から状態を把握する
病院の受診や往診の時は、薬の変更があるかも知れません。
薬の量や内容の変更があってもこちらから質問しないと「いつのまに変わってたんですか」となりかねません。
例えば
血圧がいつもより低いなと思って聞いてみると「こないだの受診の時に降圧剤を増やしてもらった」
血糖値が落ち着いてきたと思ったら「インスリンの量を増やしてもらった」
というか、その場合がほとんどです。
家族や本人から薬剤情報を伝えてくる方はほとんどいないと思っていいと思います。
理由は、リハビリにはそんなに関係ないと思われている方が多いからと考えています。
このように利用者は、薬が変わったり量の変更があってもあまり気にされなかったり、話すまでもないと思う方が非常に多くこちらからの声かけが必要になってきます。
もし、変わったけどどんな薬が増えたり減ったりしてのかわからない場合は
お薬手帳を確認して前回受診日と比較し量や内容を確認しましょう。
それをもとに何が良くなってて何が悪くなっているかみていくことができます。
副作用を把握してリスク管理を行う
副作用って沢山あって覚えるのが大変
いろんな薬を飲んでいるから、副作用なのかなんなのかよくわからない副作用を知ったからどう介入に生かせばわからない
多分こんな感じだから副作用について調べて介入する方って少ないのかなとおもいます。
訪問理学療法の対象となる利用者が服用する
頻度が高い薬剤とその副作用、動作への影響についてまとめました。
睡眠導入剤、抗不安薬
夜間、薬効が持続しているなかで、トイレに行くと覚醒不良のため転倒する危険性があります。
また翌日への持ち越し効果(ふらつき、運動失調、意欲低下など)も現れやすく、下肢の脱力によって転倒の危険性が増します。
服薬中の利用者においては、
睡眠中や翌日の午前中の様子を注意深く観察し、認知機能や運動機能に支障はないか、理学療法中の眠気や意欲低下などの副作用がないか確認する必要があると思います。
質問】
夜はどのくらい寝ていますか?
夜中、トイレに行くときにふらふらしますか?
夜はどの程度寝ているか確認して一日の流れを把握しましょう。
また、夜間は副作用にて歩行時のふらつきがあるのでその点について聞くことで環境調整にも役立つことが出来ます。
抗パーキンソン病薬
長期投与により、さまざまな日内変動が起こります。
wearing off現象:薬効時間の短縮に伴い昼前や夕方に無動や歩行困難が起こります。
on-off現象:服薬時間に関係なく急激かつ不規則な日内変動で一日に何回も繰り返す。
幻覚や妄想などの神経症状が出現して、コントロールが困難となる。
服薬1時間後を目安に介入することが望ましい。しかし、on-off現象も重なってしまうとその時間でも無動や歩行障害が出現してしまうので注意が必要。「なにかが襲ってくる」など恐怖症状等あれば副作用だと考えご家族に説明しましょう。
リハビリ中は、日内変動の体調の変化に気を付けましょう。
日内変動を時間でチェックしたければ「パーキンソン病症状記録ノート」がインターネットにて無料ダウンロードできるので使用してみるといいですよ。
降圧剤
脳血管障害の予防としても使用される降圧剤には、過度の降圧作用によりめまい、頭重感が起こりやすい。
このため、理学療法の体位変換、特に立ち上がり時(起立低血圧)には、転倒に十分な注意を要します。
副作用が強くなる場合は、薬剤の減量・変更・中止などが必要となる。
降圧剤の中にもいろいろな種類があり主に3種類についてあげます。
B遮断薬
心臓のポンプ機能を弱めて、末梢血管を拡張させ降圧します。
心拍出量を低下させるため、徐脈になりやすく運動を行っても脈拍が増加しにくいこともあり運動強度には注意が必要が必要です。
ACE阻害薬
簡単に言うと、アンシオテンシンⅡという物質が生成されると血圧が高くなる。それを阻害することによって降圧作用を行う。
副作用として空咳が好発します。
この薬は、脳血管障害の発症を抑制し、腎保護作用と心肥大抑制作用をもち、糖尿病患者の合併症の予後改善、心房細動の新規発生を予防するという点で注目されており、年々使用頻度は増えている。
a₁遮断薬
動脈を拡張させたり、排尿を促進させて(利尿作用)降圧させる。
利尿作用 チェックポイント
副作用として「脱水」があげられます。
質問】おしっこはどのくらい出ていますか?
のどが渇いたりしてませんか?
フィジカル】頻脈がある、口の中が乾燥していないか
これは、交感神経の過剰阻害による過度の降圧作用により、起立低血圧を引き起こす場合があり、転倒のリスクとなるため注意が必要です。
経口血糖降下薬、インスリン注射
副作用は低血糖症状です。
これにより、うつ状態やせん妄を引き起こすことがあるため、十分に注意が必要です。
特に運動療法(ブドウ糖を消費する有酸素運動)を施行している場合に、低血糖症状が誘発されやすくなります。
リハビリ時は、対象者の様子を観察し、低血糖症状による自覚症状の有無を常に確認するべきである。
午前中に介入するのであれば朝食をとっているのか確認しましょう。そして、服用したかも確認します。
理由として、夕食~朝食は一番時間が長いことから朝食を抜いた状態で介入すると低血糖症状になっている可能性が高いと思ってください。
もちろん、午後であれば昼食の確認も必要です。
脂質異常症治療薬
ミオパチーや横紋筋融解症が起こる可能性があり、対象者が筋肉痛や脱力感、全身倦怠感、こむら返りなどたびたび訴えた時はこの副作用を疑いましょう。
特に激しい運動を行なっていないにも関わらず筋肉痛や脱力感等の症状があった時は、ぜひ薬に対しても目を向けてみるといいと思います。
ステロイド薬
長期投与による副作用はみなさんご存知だと思うので症状が起こった場合の対応についてお話しします。
その場合は、薬剤減量も大切ですが、副作用の症状に合わせて降圧薬や糖尿病薬、脂質異常症薬、骨粗しょう症薬などを併用することも検討が必要だと思います。
これに関しては、リハビリ職がどうこう言ったから内容が変わるわけではないですが知識として知っていただければと思い書かせて頂きました。
では理学療法としてなにを注意して介入すべきか。
それは、視力障害による転倒の危険性があるので注意が必要です。
まとめ
訪問理学療法の対象は、体の状態が悪い方が多いことから副作用が起こりやすくなっています。
そして、内服している薬剤の副作用がADLの低下をきたしている場合もあります。
今後、リハビリの場面でも、利用者が服用している薬剤を把握し、その副作用によって訪問理学療法や日常生活にどのような影響を及ぼすのか、介入時に起こりうる危険性も予測して行っていくことが必要であると考えます。
紹介
今回、この記事を書くにあたり
「訪問理学療法技術ガイド」を参考にさせていただきました。
この本は、辞書のようなもので分からないことがあればその都度調べることが出来る優れものです。
福祉用具から薬剤情報、リスク管理、アプローチ方法、疾患別理学療法など訪問系の教科書でこれほど幅広い分野を網羅されている本はないと思います。
ぜひ、訪問リハで関わっている方は1冊持っていたい本です。
手に取ってみてはいかがでしょうか?
以上簡単ではありますが、臨床で少しでもお役に立つことが出来たら幸いです。