理学療法士 キュンの在宅リハログ

「モニター、機器が少ない中でのフィジカルアセスメント方法」や臨床疑問をできるだけ分かりやすく、セラピストはもちろんのこと在宅に関わっている看護師やヘルパーにも使える情報を発信していくブログです。

離床で悪くなったとは言わせない

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離床で悪くなったとは言わせない

理学療法士のキュン(@kyunn23)です。

 

寝たきりの利用者が訪問時に微熱や体調不良よりご家族から離床はやらないでくださいと言われることがあります。

この時、皆さんはそれに従ってベッドで介入しますか?

 

ご本人の体調をこちらで評価せずに言われたから離床しないの誰でもできます。

リハセラピストは、いかに状態を把握して離床の必要性を伝えていくかが重要だと思っています。

 

結論は、離床はした方がいい。しかし、離床できるかの評価した上で行うです。

 

理由は、寝たきりの方は仰臥位を続けることにより肺の下側に無気肺が生じやすく「下側肺障害」、放置しておくと肺炎などを引き起こす呼吸合併症。また、心機能低下や廃用の進行がありワッサーマンの歯車を回すことができず酸素運搬がうまいかなくなり、合併症予防にもなるからです。

 

今回は、離床が必要な理由について臨床で思うことをお伝えします。

 

 

離床を消極的に考えるパターンと離床の必要性

 

微熱

痰が多い

疲れてそう

このパターンは離床した方がいいと思いつつ、できないことが多い場合ではないでしょうか?

 

例えば、家族や本人、看護師など「ちょっと熱が少しあるのであまり動かさない方がいいと思います

それを「ハイハイ」と聞いてしまうリハセラピストではなんのための国家資格なのか分かりません。

 

微熱があっても脈も落ち着いていれば感染的なものではないと考えます。こもり熱の可能性が高く離床はした方がいいと私なら思います。

しかし、離床させたことで「やっぱり離床させたから熱が上がってきたじゃない」と離床させたことが悪いと言われることもあります。

 

 

その場合は、「熱は37.5ですが脈がいつもと変わらず落ち着いていました。呼吸音も正常でした。室内の温度がストーブを焚いていたため高く、厚い布団も何枚かかけていたこともありこもり熱が原因と考えられました。車いすに座ったところ熱も1度下がりました。もしかしたら、室内温度や布団のかけすぎとかはないですか?脈は速いですか?

このように、自信をもって離床した理由を伝えればしっかり確認して離床したんだと分かってくれると思います。

 

ポイント

離床のフィジカルアセスメントはたくさん知る必要がある。離床理由は、明確にする。

 

では、一つずつ考えてみましょう。

微熱

リハビリテーション医療における安全管理•推進のためのガイドラインにのっとり「安静時体温が 38 度以上」でなければ離床を考えます。

しかし、例外もあります。

例えば、平熱が35度の方であればプラス1.5度のあたりで離床すべきか検討します。この時、熱があっても脈の上昇(1度に対して脈が20以上の上昇)が見られなければ感染的な熱と判断せず離床することもあります。

もし、熱が無くても呼吸数(30回/分以上)が早い場合は注意も必要。基本的には体温は最後に代償するものなので脈や呼吸が早い時は気をつけましょう。

 

微熱があるから離床しないのではなく、平熱と比べてどうか、脈はどうなっているかを評価しましょう。

痰が多い

これに関しては、ご家族から言われることが多いです。呼吸が苦しそうだからとかせき込んでいるので離床は控えた方がいいとのことです。

 

呼吸が苦しい、せき込んでるのであれば確実に離床すべきです。

 

呼吸が苦しそうなら尚更起こして換気量を増やすべきです。真っ直ぐ座らせることで横隔膜が働きやすくなるため吸気量が増えます。

また、せき込みは肺にある痰を排出してくれる素晴らしい反射です。もっと強くするためには換気量を増やし咳嗽力を高めます。そのためにも起こすべきです。

疲れてそう

疲れているのはむしろ動かないことによる疲労と考えます。

動かないことにより、肺の弾性力は低下して換気量が減少し酸素化能も低下します。また、胸郭が常にベッドに圧迫され胸郭の変形や柔軟性も低下します。心臓は、そもそも筋肉でできているので収縮力が低下します。それによって拍出量の減少や心臓に戻される血液量も減り循環効率が低下します。筋肉に関しても、廃用性萎縮を招きます。

それによって、

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この歯車が3つとも小さくなるため歯車を回すのに負担がかかります。労力を増やすことでATPを作る量を維持しています。この不の連鎖は臥床によるものです。筋骨格系が働くにはこのエネルギーが必要なので歯車を回りやすくするためにも離床は必要です。

 

下側肺障害の離床理由

私が一番離床しなくてはいけない理由は、下側肺障害を考えます。

長期臥床になることで下側で無気肺が生じ肺炎リスクが上がるからです。

 

肺炎を予防することが、自宅で生活を送るためには必要だと考えます。

 

寝たきりの方は、下葉の聴診を行うと空気の入りが大抵弱いです。特に、右側です。その場合、換気量を増やしてあげることで改善します。

 

無気肺は、換気量を増やして肺胞一つ一つに空気を送り込むことが必要になってきます。

どうやったら換気増えて送り込むことが出来るか?

 

車いすであれば、真っ直ぐ座るようシーティングを行います。

この時が一番換気量が増えるからです。

そこで、呼吸介助も行うことで肺の弾性力や胸郭の柔軟性を維持しつつ、無気肺の予防につながりそして、肺炎予防になります。

 

まとめ

離床は、アセスメントをしっかり行ってから行うことが大前提です。

ただ、チャレンジしてみようではいけません。

自分の中で合併症予防なのかリスクを取るのかを常に考えて介入していく必要があります。

 

 

離床をすることによって、ワッサーマンの歯車を回しやすくなることは確かだと思います。そして、合併症の予防にもつながり入院せずに自宅で生活を送れる方は増えます。そのためにも、私たち訪問セラピストが言われたことを「ハイハイ」と聞くのではなく自分の意見を発信して少しでも離床を促せる機会が増えれば幸いです。

 

以下の記事も参考にしてください↓

 

yamaga.hatenablog.jp

 

 

yamaga.hatenablog.jp