理学療法士 キュンの在宅リハログ

「モニター、機器が少ない中でのフィジカルアセスメント方法」や臨床疑問をできるだけ分かりやすく、セラピストはもちろんのこと在宅に関わっている看護師やヘルパーにも使える情報を発信していくブログです。

1日400回「起立・着座訓練」で機能改善

 

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1日400回「起立・着座訓練」で機能改善

理学療法士のキュン(@kyunn23)です。

理学療法士はいろんなことを考えて感覚や運動にアプローチしていかなくてはいけない。

そう思っていました。

この本を読むまでは。

 

著者は、リハビリ医師として33年間で1万人以上の患者を改善させてきた実績を持つ方です。

リハビリ医師が考えるリハビリ技士に求めていることは、

①下肢を強くしなければいけないこと

②筋活動をできるだけ強く豊富に誘発すること

その方法として「起立・着座運動」に勝るものはないということです。

 

理由は、座位や立位、歩行動作よりも下肢の筋力強化に有効だからです。

 

今回は、リハビリ医師が現状のリハビリに疑問を持ち「起立・着座訓練」を提唱していることについて自分の意見も交えながら考えてみました。

 

現状のリハビリ

リハビリ医師が求めていることは、「患者さんの足の筋力を鍛えてほしい。」これなんです。

では、理学療法士の方も同じような考えて介入してるのでしょうか?

 

現状のリハビリは、

運動に時間をおくよりもモビライゼーションや姿勢修正などなんとなく理学療法士っぽいことをしている
動いてもらうよりも手技を意識してベッド上での介入が多い
時間が余るからマッサージや話をして時間を使おうとしている

座位のバランス練習をする

麻痺側の腕を他動運動で多くの時間を使っている     

運動に時間を使う時間が非常に少ないです。

 

理由は、

「質ではなく時間で単価が決まる」

「何をやっても同じ単価」

「勉強会に行って覚えてきて患者さんに提供しても同じ単価」

 

正直何をやってももらえる金額は同じであるため、その時間内を安全に何事もないように、そして相手も自分も疲れないような方法を選択している方が多いのも事実です。

また、運動を主に行うことで「他の方はもう少し優しかった」と比較され利用者から嫌われ役になりがちな事も要因にあると思います。

 

どんなリハビリが間違いなのか

リハビリ医師は

・麻痺を治そうとする治療は改善をだめにする

・健側を強化することこそ早く歩行を回復する

・下肢を重視したリハビリを行っていない

・リハビリを行えるのは療法士だけという思い込み

このように伝えています。

どれもがリハセラピストにとって心に突き刺さる言葉が多いのではないでしょうか?

 

私は、「麻痺を治そうとする治療は改善をだめにする」この言葉は非常に考えさせられる一言でした。

 

麻痺側に時間を使うと全身運動や健側へのアプローチが不足してしまいます。それが廃用症候群の進行を促してしまう可能性もあります。また、健側への強化を行う時間も少なくなるので歩行やトイレ動作が回復しづらいことも懸念されます。

 

ただ、「リハビリ=悪い所を動かせるようにしてほしい」というイメージを持たれている方が非常に多いので健側を強化することが果たして患者さんの希望に沿っているのかについても疑問があります。たしかに、麻痺側を治療することで他の部分の介入が少なくなりますが実用的に麻痺側が動かなかったとしても「前よりも動くようになった」と思うことが大きな原動力となり「起立・着座訓練」よりも大きな成果を生むことも私は必要だと考えます。

なぜ起立・着座なのか

歩行や立位訓練に比べて筋活動を促すことが出来る

手すりなどを持つことによって安全に実施が出来る

歩いているときよりも健側の力もつきやすい

麻痺側にも筋活動が多い

 

 つまり、片麻痺の患者さんは歩行するよりも起立・着座訓練に高い効果が期待できると言えるのです。

 

家庭でのリハビリの一環として散歩をしている方(60分3メッツ)がいますが、1分間で起立・着座訓練6回を一時間(3メッツ)行うと運動の強さが同じなんです。

これは、家の中で行えるので続けやすいメリットだと思います。

 

厚生労働省が勧めるのは一週間で23メッツ。

 

つまり毎日1時間1分間に6回ずつ行うことでそれに近い運動量になります

3メッツ✖️7日=23メッツとなります。

 

回数で換算すると1日に起立・着座訓練が400回から600回となります。

 

起立・着座訓練を400回行うだけで歩くのが良くなったり、トイレに行けるようになったり、嚥下機能を良くなるようです。

 

やってみる価値は大いにあると思います。

どのように起立・着座を行うのか

この運動で必要な道具は「手すり」と「椅子」です。

腰かけたときに膝関節の角度が90度になるのが基本ですが、脚力が低下してる方は少し高さを上げます。上げるには、座面にクッションを置いたりして調整をします。

 

最初は2から3回行いバイタルを確認します。徐々に増やしていき1セット10回となれば3食の前後で60回となります。それを1セット50回になると一日8回どこかで行えるようになると400回可能となります。

 

んーーーこれ正論はわかります。

ただ、こんなん絶対無理でしょと正直私は思います。

じゃやらないかというとそうではなく一回でも多くやる。これが私の考えです。

400回出来なくても利用者さんと目標を決めていけば少しづつ回数は増えてくると思っています。今後、少しずつ臨床で取り入れていけたらと思います。

 

でも、起立・着座だけではリハセラピストとしては考えられない

誰でもできるからこんなん私たちが行う必要はない。もちろんあるとおもいます。

 

それなら、ご家族や施設スタッフに協力してリハビリの時間以外にも取り入れてもらうようにしてもいいかなと思っています。

まず私たちが起立・着座訓練を行い「○回なら連続でできますよ」「その後○分休憩してから○回続けてください」「○○回まででやめてください」と利用者の訓練内容を細かく伝えることで実施してもらえることは確実に増えますし、利用者も目標に沿って行えるので継続して出来ると思います。

 

そのためには、やはりリハビリ時間内での介入は必要になってくると思います。

 

すべてそれをやる必要はなく、例えば定期的に立ち上がりの評価日を決めてその日に重点的に行うでもいいと思います。

利用者さんもつらいしあまりやりたくない介入ですが、確実に成果は出てくると思います。

まとめ

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起立・着座訓練を一日400回を行う。現実、ご高齢の方にこの回数を行うのは無理があるのかなと思います。

 

400回がゴールではなく「1日10回立ち上がりを継続する」これも一つのゴールでいいと思います。何事も、本人から継続的に動いてもらう機会が増えればそれでいいのと考えます。

 

在宅でも動いている方のほうが良くなるのはまぎれもない事実です。

モビライゼーションや姿勢修正、座位保持訓練これらも大切ですが少しでも利用者から動いていただけるように回数を設定しながら「起立・着座訓練」を行うのは大切なことだと感じました。

 

 ぜひ、気になる方はこちらの本を手に取ってみてください。