CO2ナルコーシスってなんですか? 分かりやすく解説
CO2ナルコーシスってなんですか?分かりやすく解説
理学療法士のキュン(@kyunn23)です。
「酸素してる人、CO₂ナルコーシスには気を付けて」と看護師から話がよくあります。「分かりました」と返事はするものの「自分のときは大丈夫だろう」「酸素を上げなければ大丈夫」と思っている方はいませんか?
自分も勉強をするまでは、「急激に酸素の量を上げないように気を付けよう」これしか考えてなかったです。
なぜ、自分がこの程度の知識で利用者さんに関わっていたのか?
それは、CO₂ナルコーシスの怖さを理解していなかったからです。
恥ずかしながら、「酸素を上げただけで呼吸停止しちゃうの」とビックリしました。
CO₂ナルコーシスは、急激に酸素濃度を上げることで呼吸停止することもあり、最悪の場合は亡くなることもある非常に恐ろしいものなのです。
具体的にどんなものなのか説明していきます。
目次
- CO₂ナルコーシスってなに?
- 慢性呼吸不全(COPD)について
- CO₂ナルコーシスってなんでなるの?
- CO₂ナルコーシスにならないための対応や指導
- 二酸化炭素が上昇してきたときのフィジカルアセスメント
- 客観的に二酸化炭素を評価するカプノメーターについて
- まとめ
CO₂ナルコーシスってなに?
呼吸の自動調整能が破綻し、二酸化炭素が体内に貯留することで意識障害が出現する病態の総称です。一般的には、慢性呼閉塞性肺疾患(COPD)に高濃度の酸素を投与することで呼吸抑制・停止します。
これでCO₂ナルコーシスってなんなのか分かりますか?
そもそもなんでCOPDの方なのでしょう?
慢性呼吸不全(COPD)について
COPDの方は、なぜ呼吸が苦しくなるのでしょうか?
それは、吐くことがうまくできないからです。
肺の弾性力が低下しているために肺が過膨張していしまい肺を縮めることが出来ないのです。そのため、古い二酸化炭素が溜まることで低酸素血症が常にあることになり呼吸が苦しくなるのです。
だから、口すぼめ呼吸をして極力長く吐かせる訓練をリハビリで行っていますよね。
この、常に二酸化炭素が溜まっている状態が高濃度の酸素投与を送ることでCO2ナルコーシスになることになってしまうのです。
CO₂ナルコーシスってなんでなるの?
COPDの方は、吐くことがうまくできないために古い二酸化炭素が慢性的にたまっている状態ですよね。
本来であれば、二酸化炭素が溜まっているとこで呼吸のスイッチが入り喚起を促します。しかし、二酸化炭素が溜まっていることに慣れてしまっているのでここでは呼吸を促しすことはしないのです。
じゃ何も基準にして呼吸の換気スイッチをおこなうのか?
低酸素状態の時に呼吸を促そうとします。
つまり、酸素が低下していると呼吸を促進して
酸素を増やそうとするのです。
私たちが、酸素投与するというのはここに対する補充なんです。
高濃度の酸素を「ドカン」と補充をすると酸素濃度が増えてしまいます。酸素濃度で換気スイッチが切り替わるので濃度が増えたことによって「酸素が多いから呼吸をしなくても大丈夫だ」と判断してしまい換気のスイッチがオフになります。
すると、一気に呼吸抑制・停止になり危険な状態になります。
これが、CO₂ナルコーシスになる原因です。
慢性的な二酸化炭素の貯留に伴い受容器が慣れてしまい、二酸化炭素濃度から酸素濃度に換気スイッチが入れ替わってしまうからなんですね。そこに、酸素が投与されると「酸素あるから大丈夫」と判断してしまい余計に苦しくなってしまうのです。
CO₂ナルコーシスにならないための対応や指導
急激な酸素投与は避けましょう。徐々に低流量から始めることが原則です。
先ほど話した通り、健常人であれば二酸化炭素の濃度で換気のスイッチをオンにするかオフにするかを決めていますが、COPDの方は酸素の濃度で換気のスイッチをオンかオフにするためCOPDの方にとっては高濃度の酸素を投与するということは毒を体内に入れると同じようなものなのです。
ですので、動作後に「苦しいから酸素濃度を上げてくれや」と言われても一気に上げるのではなく徐々に低流量から始めていきましょう。
二酸化炭素が上昇してきたときのフィジカルアセスメント
もちろん血液ガスデータや動脈血二酸化炭素分圧を見るのが正確ではありますが、なかなかすぐにデータとることはできません。
やはり、在宅ではフィジカルアセスメントが有効です。
Paco2正常値40~45mmhgですが、そこからプラスいくら増えるかで体の症状が変化していきます。
5~10mmhg上昇 手が暖かくなる
10~15mmhg上昇 発汗、脈圧増大を伴う高血圧
15~20mmhg上昇 羽ばたき振戦
20~30mmhg上昇 傾眠
30mmhg以上上昇 昏睡
これでいくと、二酸化炭素が溜まったからといっていきなり失神するわけではありません。
徐々に溜まり始めますとまず手が暖かくなります。
二酸化炭素は、血管拡張作用があるので末梢の血流が増えたて汗をかいたり、脳血流の増加に伴い頭痛が起きたりといった症状が起きてきます。
そのような時は、二酸化炭素が溜まっているんじゃないかと疑ってみてください。
客観的に二酸化炭素を評価するカプノメーターについて
ただ、どうしてもフィジカルアセスメントは正確ではありません。
客観的に知りたいときは、カプノメーターを使ってください。
呼気の二酸化炭素濃度を測定できる機械です。
非常に高いので、簡単に購入はなかなか難しいのが現状です。
自分は使用したことがありませんので詳しい方いたらぜひ臨床の内容や使い方などお話ししたいです。
まとめ
COPDの吐くのが苦手なことによる慢性的な二酸化炭素の貯留に伴い、受容器の慣れによって二酸化炭素濃度から酸素濃度に換気スイッチが切り替わります。これが、急激に酸素濃度を上げたときに「もう酸素がたくさん体の中にあるから呼吸はしなくてもいい」と判断をしてしまい呼吸を抑制・停止させてしまうのです。
そうならないためには、低流量から徐々に始めることが原則となります。苦しいからと言ってむやみに酸素濃度を上げないように気を付けていきましょう。
もし、いつもより手が温かかったり、汗をかいていたら二酸化炭素濃度が高いかもと疑ってみてください。
酸素をつけていて、運動時に呼吸が苦しくなるとこちらも不安になりますよね。しかし、私たちより利用者さんはもっと不安になっていると思います。
自分たちが適切な知識を持って介入することで何かあったときに少しでも落ち着いて対応ができるようになると思います。
酸素療法でのリハビリをしている方に少しでも参考になればうれしいです。